六合八法拳(精花太極拳の編纂過程〜番外編〜)

標準

自分は常々、たとえ著名な先生方と交流をさせていただいたとしても、極力、お名前はどこにも書かないようにしていた。
というのも、武術界では無名の自分がそうした先生方のお名前を出させていただくことは、「虎の威を借る狐」というか、分をわきまえない不相応な行為のような気がしていたのだ。

今回は「六合八法拳」のメインタイトルに、サブタイトルが「精花太極拳の編纂過程〜番外編〜」になっているわけだが、精花太極拳の編纂過程…というよりも、精花太極拳が生まれてきた過程でどうしても外せない方がいる。

それが一時、自分の兄弟子の存在でもあった「日本六合八法内家拳術會」の代表でもある市橋秀実先生である。(以下、普段呼んでいるように市橋さんと書かせていただくことと、この記事が市橋さんの許可を得たものである事を明記しておく)

諸処の事情により、市橋さんとはいつどこで兄弟弟子の関係にあったかを詳しく説明することは出来ないが、今も昔と変わらず交流は続いている。

ざっと経緯をたどると、市橋さんとは一旦、兄弟弟子の関係でなくなってしまった後も、「内功武術 豊松会」の主催者である故・豊増先生へのご挨拶も兼ねてよく道場で顔を合わせていたし、練習に参加させていただいたこともあった。

その後、市橋さんがめでたく「華獄希夷門」の正式門人となり、「日本六合八法内家拳術會」の代表となられた時も、お祝いがてら伺った際には、武術好きの血が騒いで色々と六合八法拳について質問させていただいたものである。(笑)

それがこのタイトルに繋がっていくのは、以前のブログ、「精花太極拳」の中で、

『癌で闘病中の弟子が悲しそうに言うには、点滴の針が刺さった腕で練習をしようとすると、双辺太極拳の最大の特徴でもある「螺旋」があるが為に、
「点滴の針が腕の中でよじれて痛い」

と言うのである。』

という話を書いた、その時の事である。

もちろんこの時に精花太極拳の発想すら影も形もなく、捻りがない拳法といって浮かんだのは、まさに第4の内家拳とも呼ばれる六合八法拳であった。

市橋さんにはその時、どの程度事情を説明したかはよく覚えていないが、快く六合八法のメイン套路とも言える「築基拳」を、諸処の事情を越えて自分に教え始めてくれたのである。

そして習いたての、まだやり始めたばかりも良いところの中途半端な套路を、病院の個室で、闘病中の弟子に嬉々としてやって見せた事を覚えている。

当時、まだ師範でもなく精花太極拳もなく…今と比べてしまうとまだまだ太極拳の知識が浅かった自分には、兄弟子の気持ちが、どんなに嬉しく心強かったかしれない。

だが結局は、弟子自身はほとんど築基拳をやる機会もなかったのだが…。

この頃のエピソードで、一つ深く印象に残ってる出来事がある。

それは、純粋な力の出し方を行う築基拳を初めて体験した時のこと。その後の飲み会で手が震えて箸を落としてしまうほど、身体の感覚が違ってしまっていたのである。

一番ショックだったのは、その時、八卦掌の「螺旋」だと思っていた感覚が、すっかり消え去ってしまったことだ。

以前のブログ「明鏡拳舎の八卦掌2」にあげた動画が今から7年前なので、それなりに出来ているように見えるその時の八卦掌の功夫ですら、実はまだまだ螺旋の理解も功夫も足りていなかったのである。

自分が八卦掌の「螺旋」をさらに研究するようになったのもこの事がきっかけなので、市橋さんには心の兄弟子として、色んな導きをいただいたと思えて感謝に堪えない。

もちろん、その後7年の間には様々な気づきもあったし、螺旋の意味も深まったと感じている。自分の八卦掌もまた、その時と同じところに留まってはいない。

話は逸れたが、弟子が亡くなったあとも、市橋さんは築基拳を最後まで誠意を持って教えてくださった。築基拳も長い套路なだけに、最後まで終えるのはその過程も含めて、やはり感慨深い。

ただ、六合八法としてはその解釈にカスタマイズされた形意拳や八卦掌、さらに三盤十二勢や呂紅八勢など、それ自体が練功でもあり変化・応用でもあるものをやらなければ六合八法の体系を学んだとは言えないことは自分自身がよく理解している。

だが、自分にはやはり自分の形意拳や八卦掌があり、ここから先は再び、それぞれの門でそれぞれの道を歩んでいく事になるだろう。

市橋さんもそうした事を全てわかった上で、貴重な時間を割いて伝えてくれた事は、本当に義侠心に溢れた姿だと思っている。

市橋さんは、今でも自分にとっては兄弟子のままだし、尊敬の念にやまない存在なのである。

…と、話はここで終わりではない。

次回は、「六合八法拳と精花太極拳」というタイトルで、今までとは違った内容から精花太極拳の編纂過程を紹介しようと思う。

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