成長 ~ 日記より(3)~

標準

今回は日記を3つまとめてアップしてしまおうと思う。
それに合わせて、ここ一連の記事のタイトルも変更した。
こうして読み返してみると、本当に二転三転し、次から次と試練が襲いかかってくるかのような怒涛の日々であった。
しかし、それとは逆に、気持ちの方は静かな水面の如く、徐々に澄んでいく。

2013年12月2日・書き込み
タイトル:「最初の生徒 最終報告」

私の最初の生徒につきまして、皆様には大変ご心配をいただきました。深く感謝申し上げます。
お陰様で11月30日に無事、癌を克服して退院することができました。この度の退院を持ちまして、私の最初の生徒についての、報告は最後にしたいと思います。

◆◆◆
11月23日

外出許可がおりる。その足で練習会場にかけつけてくれた。手術からわずか17日。
9月に直径4.5cmの血栓が肩甲骨から頭蓋骨の中までびっしりという、信じられない状態で緊急入院してから二ヶ月。皆で喜びあった宇童会であった。
宇童会は師父に名付けていただいた名前で、宇童会の宇は宇野の宇。童はH.Kさんのペンネームに由来している。H.Kさんのいる風景こそ、宇童会だとしみじみ思う。

11月30日

H.Kさん退院の日。
4月に入院してから実に7ヶ月。本当に長い戦いだった。もっとも、医者に言わせると「かなり早い退院」らしいが(笑)。
まだしばらく痛みは残るようだし、半年ほどの補助療法と2月に二週間ほど入院しての補助的な手術は残っている。血栓も101ミリにまで小さくなったが普通で考えたら未だとんでもない数字である。
だが…

油断大敵ではあるが、僕は、この退院をもって、僕の最初の生徒の勝利を宣言したいと思う。

僕の生徒は勝った。

それは僕の確信であり、決意なのだ。
◆◆◆

この報告日記を読んでくださっている武術関係の皆様には、今後、私共々ご教授いただく機会もあるかと思いますが、どうぞよろしくお願い致します。

2013年12月31日・書き込み
タイトル:「2013年を振り返って」(一部抜粋)

去年より恒例となった?今年一年の総括です。

まずは何はともあれ、「最初の生徒」の日記にもあったH・Kさんのステージ4の癌とその克服でしょうか。
計5回の手術と抗がん剤の治療、いろんな臓器を切り刻み、取り除き…
どれほどの痛みと苦しみだったか、という戦いを4月からしてきましたが、
最近の検査では腫瘍マーカーの値も標準値まで下がり、
血栓の方も9ミリとようやく1センチを切るところまできました。
本当に、よくぞここまできたなと思います。
あとは、来年2月20日にもう一度手術と、血栓が完全になくなるのを待って
完全復活という感じでしょうか。
痛みはまだ残るものの、元気そうなH・Kさんの姿に
「これも太極拳やってるから、ここまで頑張れたんだよね」「すごいね」と
周りの人も口々にそう仰ってくれるそうです。
実際に、H・Kさんの身体を支えていてくれたのは、
真摯にこの武術を練り込んでいたからという部分も大きいと思っています。

2014年3月22日・書き込み
タイトル:「武術とは」

これは、昨年書いていた「最初の生徒」の続きである。と言っても、H.Kさんはもはや単なる生徒ではなく「内功武術 明鏡拳舎」の現時点でただ一人の学生(拝師弟子候補生)であるが。

もうこの続きを書くことはないと思っていた。
でも、記しておきたい事が出来たのだ。

2014年2月13日

・癌は全て取り終えて、ストーマを外す術後処理的な手術。これで全てを乗り越えて退院を待つのみ…のはずだった。

2014年2月19日

・再び癌が見つかる。既に治療したはずの肝臓だった。それも、三箇所に転移していた。肝臓の手術は出血も多くて難しく、前回は10時間を越える大手術だった。「またしても、同じ大変な手術をしなければならないのか」と…その日の内に報告のメールが届いたのを読んで、しばし愕然とした。淡々として落ち着いた…まさに明鏡の如く、静かな水面のような文章だった。それが余計に心に沁みた。
こうして、家族に、友人に、一人一人に報告するのはどんな気持ちだろう。

2014年2月22日

・H.Kさん、退院。そしてその足で宇童会へ。休憩時間にH.Kさんの退院祝いを行う。肝臓の手術が控えていたが、純粋に退院を祝えるようにと、あえて皆へ癌が見つかった事の報告はせず、個別に後から伝えた。
退院祝いには、会津の郷土料理であるニシンの山椒漬けを5日前から作っていって、ノンアルコール飲料と共に皆で味わった。ちなみに漬けたのが5日前と言うことは、この時はまさか癌が再びみつかるとは、考えてもいなかった。

2014年3月8日、9日

・2日前に手術の準備で入院し、外出許可をもらっての宇童会の参加。9日も八卦掌クラスに参加し、その後に学生練習。こんなにも元気なのに癌があって、明日は手術なのだ。
ベストコンディションで手術に臨む為に、丁寧に二人で練習を繰り返した。

2014年3月10日

・二度目の肝臓の手術。昨年の4月から数えて、もう何度目の手術だろう。二回目の方が手術の後の状態はひどくなるのが普通との事だった。予定では7時間。予定は前回と一緒だが、今回はどうだろうか?
手術時間は6時間半。今回も無事、手術は成功した。

本日。2014年3月22日

・大手術からわずか12日。H.Kさんが宇童会にいる。前日に退院し、それも医者や看護婦からは、肝臓の手術の後だと言うのに、もう、こんなにも元気なのは普通では考えられないと、口々に驚かれていた。術後で少し痩せた感はあるが、確かにとても12日前に大手術をしたばかりとは思えない、元気そうな姿だ。太極拳クラスが始まると、站椿、套路、推手。どれもしっかりとこなしていく。

武術は…いかに人を強くするものか。

いや、それだけでは言葉が足りない。

武術で練った功夫は嘘をつかない。
その人の誠実さや真摯な気持ちがそのまま表れる。

そのように磨かれた武術こそが、その人を護り、強くするのだろう。

…長い長い一年だった。
しかし、僕の一番目の学生は、戦いに全て勝利しただけでなく、こんなにも強くなって帰ってきた。

念の為、抗がん剤を半年ほど続ける事にはなるが、命の尊さを嫌という程見つめてきた一年だった。H.Kさんに迷いはない。

武術とは…
その先の言葉を、僕は確かに今日、H.Kさんの姿に見たと信じている。

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